言わずと知れた日本映画史上最大の功績を残した巨匠・黒澤明。
多くの海外の映画監督を始め、日本でも多くの映画人、さらに演劇・芸術関係にも多大な影響を残していると言われています。
この記事では、筆者が好きな黒澤明監督の現代劇映画を紹介します。
Contents
第10位 「姿三四郎」___初監督作!
1943年公開の「姿三四郎」は、黒澤明”監督”のデビューとしての作品でした。
主人公の姿三四郎が柔道を通して友情や挫折を味わい、成長していくという王道の青春映画です。
戦時下にありながら、ラブストーリーも交えて爽やかで魅力あふれるキャラクターたちを描いた作風は、後の黒澤監督作品に通じる才能の豊かさが感じられる、素敵な日本の古典映画でした。
第9位「生きる」 ”意外”な現代劇
1952年公開の「生きる」は、現代劇でポピュラーな作品です。
市役所に勤める一人の男が余命宣告を受け、残り僅かとなった人生を見つめなおす物語は、普遍的でありながら今なお人の心を揺さぶります。
昨年、黒澤監督没後20周年の記念作品として、ミュージカル化され、大いに好評を博しました。
第8位「野良犬」 日本の”刑事ドラマ”の原点
黒澤明監督が描くシリアスなサスペンス作品。
拳銃の盗難から始まる物語は緊張感を持って進行し、観衆を引き込んでいきます。
個人的には息を飲む『階段』のシーンがお気に入りです。
第7位「どですかでん」 社会の底辺にある鮮やかな光
貧しくともたくましく生きる人々の日々を人情と哀愁、コメディを交えながら描いた作品。
黒澤作品のなかで初のカラー作品が本作になります。
カラーを意識したのか、作品の映像は貧民外を映しているにもかからず色彩豊です。
タイトルも色に対する貪欲さを感じるほど主張の強い配色になっていて目が疲れます。
貧しい暮らしに微塵も屈せず日々を送る人々の力強さを象徴しているのか、原色で濃く色づいた街並みは印象的で活力を感じさせます。
話の筋としては特に大きな事件や目的は無く、貧民外の日々を徒然に映して日暮れと共に幕を閉じる、そんな映画です。
好き嫌いハッキリ分かれるタイプの映画ですね。
第6位「夢」 彼の見た”夢”
巨匠の作品としては珍しいオムニバス形式の映画です。
色彩感覚豊かな黒澤監督が、その才をいかんなく発揮した作品で、どのストーリーも印象に残るシーンには色を効果的に使い見せたい部分を強調するような演出がなされています。
8つのショートストーリーはどれも幻想的な雰囲気で正に『夢』。
しかし妙な現実味を感じさせるシーンもあり、そういうシーンで印象的な配色が画面を彩っています。
気に入っているエピソードは3つ。
ひとつ目は『赤富士』。
放射能に色を付ける技術が開発されていて、放射能を見ることができる世界が舞台。
原発が爆発し人々は東京から散り散りになって富士山に逃げてきたという話。
放射能に色がついているので主人公たちが七色の放射能の霧に迫られているシーンはちょっと滑稽でもあります。
しかし、こういった荒唐無稽さこそ夢の特徴ですよね。
5話目の『鴉』は一押しのエピソード。
夢の中でゴッホと出会う者の話です。
ゴッホの作品の中に次々に入っては出てを繰り返す、正に夢のような映像。
物語の最後、バッとカラスの群が空へ羽ばたきながら舞い上がる場面は必見です。
第5位「まあだだよ」 遺作
黒澤監督が最後にメガホンを握った作品です。
巨匠の晩年の作品によくある人生賛歌的な雰囲気のある本作。
随筆家の百聞先生の晩年を心温まるエピソードで送ります。
大きな出来事は無く、宴会シーンが定期的に映されて、気付けば終わっているという観客からしたらどこか狐につままれたような感覚が残る作品です。
平和な時はもちろん盃を酌み交わし、空襲で家をうしなっても飲み、その後も仲間や教え子と宴会を催しては飲む。
宴会のシーンがどれも楽しそうで見ているこっちまで飲みたい気分になります。
作品で存在感があるのは所ジョージです。
当時からお祭り男と称されていた所さんを抜擢した黒澤監督の眼はまったくもって素晴らしい!
宴会の席の楽しい雰囲気を彼ひとりで倍にさせる力を持っています。
ラストシーンで百聞先生は最期を迎えます。
幕を閉じるまでの一連の流れの美しさは人生の余韻を感じさせるもので素晴らしいです。
第4位「酔いどれ天使」 初期の”代表作”
黒澤明監督と三船敏郎さんと初めてタッグを組んだ映画です。
検閲などがとても厳しい時代だったことから、他の作品のテイストとは異なり、暴力を否定する傾向の芝居が求められた作品でしたが、その中に在ってもヤクザ役の三船さんの迫力は逆に研ぎ澄まされた印象が残る作品となりました。
検閲などがとても厳しい時代だったことから、他の作品のテイストとは異なり、暴力を否定する傾向の芝居が求められた作品でしたが、その中に在ってもヤクザ役の三船さんの迫力は逆に研ぎ澄まされた印象が残る作品となりました。
第3位「デルス・ウザーラ」 異色の日ソ共同製作映画
1975年公開の「デルス・ウザーラ」は、当時、映画製作に行き詰まり、苦しんでいた黒澤監督が、ソ連の資金提供、そして制作の支援を得て完成させた作品でした。
1900年代初頭のシベリアで、アルセーニエフという探検家が空白地帯の地図を作るためにガイドとして雇った原住民の猟師のデルス・ウザーラと触れ合っていくうちに、その交流から本当に大事なことを学んでいくという奥深い人間ドラマです。
シベリアの厳しくも豊かな大地で、アルセーニエフとデルスという、ロシアの中でも生き方も全く違う人物が交わることで生まれる絆を描いた静かな物語です。
全編ロシア人キャストということで、黒澤作品の中でもことに珍しい作風ですが、一味ちがった良作として密かに知られています。
日本人の黒澤監督がロシア語で撮影したという本作でアカデミー賞の外国語映画賞を受賞し、ここから低迷期を抜け出した黒澤監督は後にさらなる大作に挑むことになるのです。
第2位「悪い奴ほどよく眠る」 異色の社会派ドラマ
父親を無実の罪で失った主人公・西。
復讐心に燃える西は父の仇を追い詰め、徹底的に懲らしめていく。
黒澤映画といえばこの人、三船敏郎が隙のない髪型とメガネにスーツ姿というビシッと決めたいでたちで情け容赦ない復習鬼を演じきっています。
相棒の板倉と共に何食わぬ顔で暮らす悪人どもを締め上げていく本作は痛快ではありますが、黒澤映画ならではのエンタメ要素以外のピースも欲しい。
しかしラストは黒澤作品の中でも衝撃的な出来になっていますので是非御覧になって欲しい。
第1位「天国と地獄」 哀しき本格サスペンス
黒澤監督のサスペンス映画の中でも随一と言われる作品。
三船敏郎が扮する大企業の常務・権藤の子供が誘拐され、多額の身代金を渡すよう脅迫されます。
しかし誘拐されたはずの子供は自宅におり、いたずらかと思われたが、権藤が雇っていたドライバーの子供が誤って誘拐されたことが発覚。
権藤から自身のミスを指摘されるも引き下がらない犯人。
3000万円という法外な金額をびた一文負けるつもりのない犯人に対して権藤と警察が策を講じる。
犯人が大胆なやり方でその裏をかくのか、また犯人の動機は何か?息を飲む展開が続きあっという間に時間が過ぎます。
まとま
黒澤明監督の現代劇中心にご紹介しました。
時代劇に注目されることが多い黒澤明監督ですが、現代劇映画にも秀逸な作品がたくさんあります。
ぜひご覧ください!
※この記事を執筆するにあたり参考にしたサイト:黒澤明.com